見出し画像

【復興に向けた活動の記録】炊き出しや交流イベントを経て、被災地との絆を深める(金沢武士団)

被災地で、避難所で、今いる場所で。たくさんの人々が被災地や被災者のために立ち上がり、知恵や技術、思いを持ち寄って活動を行っています。一人ひとりが今自分にできることを考え、実践することで、小さな力が大きな力に変わります。

スポーツの力で被災地を元気にする

2024年9月28日にバスケットボールB3リーグの新シーズンを迎えた『金沢武士団(サムライズ)』。2022年から七尾市の田鶴浜体育館を練習拠点とし、地元ファンとの絆を深めてきたこともあり、金沢市総合体育館で行われた開幕戦には能登方面から多くのサポーターが来場。それに応える形で選手たちが熱意あふれるプレーで会場を湧かせるなど、能登復興のシンボルとして被災地に活力を生み出すことが期待されています。

そんな『金沢武士団』には、石川県出身の2人の選手が在籍しています。

「震災後すぐに金沢市から祖父母が暮らす七尾市の中島町へ家族と移動しました。現地に着くと想像を絶するような状況で、その時の光景は今でも鮮明に覚えています。地震が起こったのはシーズンも終盤に差しかかった頃。部屋の片付けや避難所の手伝いをする中で、プレイヤーとしての気持ちを保ち続けるのが大変でした」

そう話すのは、地元出身選手として大きな期待を背負う久保拓斗選手。古い家屋の多い中島町や田鶴浜町は家屋倒壊の被害が大きく、今なお復旧作業が続いています。

久保拓斗選手
1999年生まれ、金沢市出身。大学在学中に「特別指定選手」としてプレーした後、チームに正式加入。キレのあるドライブを武器に存在感を示している。

もう1人の地元出身選手となるのが酒井達晶選手。今シーズンからの加入になりますが、これまでもシーズンオフには地元石川に帰省してバスケクリニック(※)を開くなど、地域貢献に力を注いできました。

「父方の実家が輪島市にあるのですが、残念なことにその家は解体することになってしまいました。色々なタイミングが重なって地元のチームでプレーすることになりましたが、今は地元石川の皆さんのために戦って、復興の後押しをしていきたい気持ちが大きいです」

バスケクリニックとは?
小中学生を対象にしたバスケ教室のこと。スポーツの楽しさやバスケットボールの魅力を伝える社会活動の一環として、全国各地で開催されている。

酒井達晶選手
1997年生まれ、野々市市出身。北陸学院高校卒業後、スラムダンク奨学生として渡米。帰国後はけがの影響もあり活躍する機会に恵まれなかったが、今シーズンよりプレイヤー復帰を果たした。

震災翌日からチームで炊き出しを開始

『金沢武士団』はチームとして、震災発生の翌日から避難所となっていた田鶴浜体育館での炊き出しを開始。これまで支えてくれた地元ファンのために、1日2食をほぼ毎日、約2カ月にわたって続けてきました。その他にもガレキの撤去や健康体操などの支援活動を積極的に実施。避難所で生活する子どもたちにとって、選手たちと交流する良い機会になったとも言います。

豚汁やけんちん汁などの温かい炊き出しを提供
七尾市内でのガレキ撤去作業

また、7月下旬には震災以来初となる田鶴浜体育館での公開練習を実施。午前は練習、午後は復興支援ボランティア活動というスケジュールで、5日間をファンと共にしました。

「田鶴浜体育館で練習ができたのは半年ぶり。そのときに『おかえり』と言ってもらえたのが一番うれしかったですね。地域との関わりがより深まったというか。そういった声をかけてもらうことが、選手たちのモチベーションにもなります」と久保選手。

酒井選手はキャンプ期間中に田鶴浜体育館で開催された大規模バスケクリニック(KOA BASKETBALL ACADEMY SUMMER CAMP 2024 in NOTO)へ参加し、200名以上の小中学生と交流を果たしました。

『金沢武士団』主催によるクリニックも定期的に開催している。

そんな久保選手と酒井選手は、スポーツが持つ力についてどう考えているのでしょうか。

「試合を見て、応援して、元気になって、その活力が地域全体に広がっていく。スポーツにはそうした間接的な力があると思います(久保選手)」

「スポーツには人々を感動させ、勇気を与える力がある。出場する際は、見ている人のエネルギーになるような精一杯のプレーをしていきたいです(酒井選手)」

2024年に開催予定の『金沢武士団』のホームゲームは以下の通り。


11月9日(土) / 10日(日) @調整中
11月22日(金) / 23日(土) @松任総合運動公園体育館
12月14日(土) / 15日(日) @末広体育館(義経アリーナ)
12月21日(土) / 22日(日) @金沢市総合体育館


感動が渦巻くバスケットコートへ。ぜひ皆さんも足を運んでみてはいかがでしょうか。

※このインタビューは令和6年(2024年)8月上旬に実施されたものです。